自作の小説など。

Step by Step  豊田元広・著

プロローグ

 「キャンパスライフ」という言葉から、読者の皆様はどんな光景を想像するだろうか。まだ大学に進んでいない中高生からしたら、新しい世界がパーッと開けてくるであろう憧れの空間かもしれないし、既にキャンパスライフを終えてしまっている社会人からしたら、もう戻ってこない、すごく楽しかった日々を思い出すかもしれない。
 いずれにせよ、その言葉から想像される世界というのは、その前後に用意されている、中学や高校の雰囲気や社会人の雰囲気とは明らかに違うはずだ。俺が想像していたキャンパスライフというものも、世間のご多分に漏れず、そのようなものだと思っていたわけだ。
 しかし、そのキャンパスライフに対して過度な期待を抱く高校生も少なくないはずである。たいした根拠もないのに、「大学に入ったら俺は変わる!」みたいな夢を抱きながら、儚く砕け散って五月病〜、なんて経験のある大学生さん、あるいは「元」大学生さんも数多くいることだろう。
 だがそんな世間の五月病患者さんを笑うことができない俺がここにいた。俺もたいした根拠もないのに、「大学に入ったら、高校までの自分から、変わることができる」って思っていたわけであって。

 俺が今通っているのは、都内にある明和(めいわ)大学。
今日は天気のいい昼休みということもあって、たくさんの学生たちがベンチに腰掛けて、弁当を食べたり、思い思いに話したりしている。そんな、いかにも「キャンパスライフ」を満喫していそうな人達の横で、俺はどうして……。


「こんなはずじゃ……ねぇー!!」

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